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M&Aコンサルタント竹内の調剤薬局ウォッチング

調剤薬局M&Aのトレンド2020

2020年。生き残りをかけた戦いの幕が切って落とされる。~調剤薬局業界の現状とM&Aトレンドの考察~

調剤薬局業界の現状と最新M&Aトレンド

調剤薬局の現状

平成の時代に医薬分業が進展し、全国6万件に迫るまで拡大した調剤薬局業界。政策的な追い風が吹き、時代の波に乗って店舗数を大きく増やし、上場企業となった調剤薬局チェーンも何社も生まれました。しかしながら診療報酬改定ごとに薬局の収益確保は難しくなっており、薬剤師の採用難、賃金上昇、調剤併設型ドラッグストアや競合薬局との競争激化など調剤薬局を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。その為、ここ数年は薬局数の伸びも鈍化しています。

年度 2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度
薬局数(施設数) 57,784 58,326 58,678 59,138 59,613

令和の時代に果たして調剤薬局業界はどうなっていくのでしょうか?今から15年前(2005年)の国民医療費は約31兆円でした。2019年の国民医療費は約43兆円と12兆円も増加しています。アベノミクスにより税収が伸びたといっても2019年度の税収は約60兆円しかありません。生産年齢人口が減少し、将来の経済成長の見通しが立たない中、団塊の世代がすべて後期高齢者となる2025年を迎えます。超高齢化社会の到来を目前に控え、国民医療費・社会保障費の更なる増加は避けられない状況です。そうした状況の下で国民皆保険制度を維持していくためには、これまでより更に踏み込んだ様々な医療費抑制政策が採られていく可能性が非常に高いといえるでしょう。

2020年の診療報酬改定基本方針では、「患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現」するために「かかりつけ薬剤師・薬局機能の評価」が以下のように記載されています。

「患者に対する薬物療法の有効性・安全性を確保するため、服薬情報の一元的管理・継続的把握とそれに基づく薬学的管理・指導が行われるよう、かかりつけ薬剤師・薬局の評価を推進。その際、薬剤調製などの対物業務から、薬学的管理などの対人業務への構造的な転換を推進するための所要の重点化と適正化を行う。」

すなわち薬剤師・薬局の業務、評価は今後一層「対人業務」にシフトするものと考えられます。単に調剤するだけでなく、地域に根差した薬局作り、在宅医療への参画、高度薬学管理機能への取り組みなどへの対応が求められています。

M&Aトレンド

今後、診療報酬は調剤料等対物業務に視点を置いた技術料から地域体制加算、かかりつけ薬剤師指導料などの対人業務が評価される報酬体系にシフトしていくことから、旧態依然とした薬局は収益が悪化することになります。その結果、経営不振で淘汰される薬局も増えていくでしょうし、収益の出ている間にM&A(譲渡)を検討する薬局もますます増加するものと考えられます。

大手調剤薬局チェーンでは診療報酬改定の方向性を見据え「かかりつけ薬剤師指導料」の算定できる体制の構築に積極的に取り組んでいるほか、「健康サポート薬局」に適合する薬局も着実に増やしています。情報通信技術(ICT)を活用した取り組みにおいても、特区でのオンライン服薬指導などに熱心に取り組んでいます。大手以外の準大手・中堅薬局チェーンなどでも将来を見据えて体制構築のための努力をしています。

しかしながら余力がない個人経営の薬局においては、厚労省が求める体制構築はハードルが高く困難であると言わざるを得ません。現状でも薬剤師不足、経営者の高齢化(後継者不在)、診療報酬改定による収益の悪化等が原因となり、大手や中堅・中小チェーン薬局への譲渡が増加していますが、今後もその流れは更に加速していくことでしょう。

M&Aで買い手となる大手調剤チェーンは、一昔前に比べて案件を選別する傾向が顕著になっています。報酬改定による収益低下を念頭に置いて一定の店舗売上のある薬局を選んでM&Aを行っています。大手のM&A基準・・・できれば年商2億円以上、少なくとも年商1.5億円は必要

中堅・中小調剤チェーンは、業容拡大意欲が強い企業が多く、買収意欲は依然として強いため、大手が対象とする売上規模以下の薬局でもM&Aの対象としています。それでも条件として、一定の売上規模、処方箋枚数、調剤技術料、エリアなどについて明確な基準(これ以下は買わない)を設けている企業がほとんどです。中堅・中小のM&A基準・・・年商1億円前後~

また、近年はチェーン薬局での経営が厳しい小規模な薬局であっても、独立開業を希望する薬剤師が譲り受けるケースが増えています。薬剤師1名と医療事務1名(医療事務を雇わずに一人で運営するケースも!)という最小人員で運営すれば、まだやっていける薬局も数多くあるからです。今後の報酬改定の次第ですが、このような小規模薬局が存続していけるかどうかは判然としません。個人(薬剤師)・・・年商5000万円前後~

いずれにせよ大手から個人まで薬局の規模感によって想定される候補先(譲渡先)は異なりますが、候補先となる買い手が多い(買い手がつく)という状況は、譲渡を検討する薬局のオーナー経営者にとって、今はまだ恵まれた環境にあるといえます。

調剤薬局業界のM&A価格相場

調剤薬局のM&Aは活発に行われています。業界誌等のメディアのニュースとして取り上げられるような大手薬局チェーンによる比較的大型のM&Aも、個人(薬剤師)が買い手となり既存の薬局1店舗を買い取って独立を果たすケースも、すべてM&Aです。

調剤薬局のM&Aは一般的な事業会社のM&Aに比べて買収後の収支計算が容易という特徴があります。まず保険点数によって売上が決まりますし、人件費についても薬剤師、医療事務で平均的な賃金が決まっています。また、処方元の医療機関の状況や立地にほぼ依存する業態ですので、過去の実績がそのまま維持継続できる可能性が高いといえます。(ただし、適用される調剤基本料によって粗利益が変わることがあります。

したがって買収後の収支計算ができて、想定利益額も計算しやすいため適正な相場が存在します。当然、相場より高ければ割高、安ければ割安という判断になります。調剤薬局のM&Aの売買額(のれん代)は、当然ですが、収益性の低下とともに減少傾向にあります。

直近(2020年)の相場観では、
〇「評価額」=「時価純資産」+「営業権(のれん)」
〇「営業権(のれん)」=「実質利益」×3年分前後となるでしょうか。

ただし、小規模な薬局ではのれん代が利益の3年分に満たないでしょうし、売上規模が大きく高収益な薬局の場合、利益の5年分というようなケースもあるでしょう。また、調剤薬局特有の目安を図る尺度として月平均の「調剤技術料」×「〇ヶ月分」といった考え方もあります。

M&Aに際しては、まず売り手オーナーの譲渡希望条件があり、買い手候補と交渉を重ねて最終合意した価格が譲渡金額となります。処方元ドクターの年齢や後継者の有無、集中率、業績見通し、売却のタイミングといった要素に加え、交渉の進め方、仲介会社の手数料の多寡などで大きく影響を受け、譲渡金額はかなり変わってきます。豊富な実績と経験を持ち、業界事情にも精通した調剤薬局専門のM&A仲介会社に査定を依頼すると適正な相場に基づいた評価金額を教えてくれると思います。

薬局価値査定サービス

以下は、当社が仲介した案件の一部です。
薬局規模 所在地 店舗数 年商
大規模 神奈川県 1店舗 250百万円
中規模 東京都 1店舗 100百万円
小規模 東京都 1店舗 50百万円

調剤薬局M&A実績・事例

調剤薬局業界のM&Aのメリット

売り手側の一番のメリットは経営者が変わっても薬局利用者に継続的に医療サービスが提供できる点にあります。現在雇用している社員の継続雇用も可能となりますし、経営者が引退に伴ってM&Aで売却することで譲渡対価(のれん代)を得ることが出来ます。(のれん代=退職慰労金のようなイメージです。)

売り手側のメリットは以下の2点に集約されます

  • ①薬局が継続されるので、処方元をはじめ患者、従業員に迷惑をかけないで済む
  • ② 譲渡に際してのれん代が付くことで、創業者利潤を得ることができる

買い手側のメリットは、以下の通りとなります。

  • ①開業して軌道に乗せるまでの時間を短くすることができる
  • ②新規出店とは異なり出店リスクを少なくすることができる
  • ③地域でのネームバリューを継承できる

いずれにしても売り手側、買い手側双方にとってメリットのあるM&Aに向けて、誠意をもって対応してくれる事業者に相談したいものです。

調剤薬局の売却・譲渡を成功させるポイント

成功するM&Aにつながるかどうかは、どこの誰に頼むかで決まると言っても過言ではありません。調剤薬局のM&A仲介は上場大手の仲介業者、銀行等の金融機関から中小M&A仲介業者、個人で仲介している事業者まで多くの事業者があります。新規参入している業者も増えており、まさに玉石混合といった状態です。

仲介業者を選ぶ際には、まずその事業者の過去の調剤薬局M&Aの実績を確認し、担当者との面談を通じて、実際に信頼できそうかどうかを見極めましょう。また、手数料の設定も仲介業者によってかなり違います(無料~2000万円!!)ので、想定される譲渡対価に見合う業者に依頼する必要があります。

仮に3000万円で売却できたとしても手数料が1000万円もかかると手残りは2000万円となります。仲介業者の実績、担当者の信頼度、手数料などをよく見比べたうえで依頼する仲介業者を選びましょう。そして仲介業者に依頼した後も、紹介を受けた候補先企業と面談を行い、薬局と従業員を安心して任せることが出来る(ご自身が納得できる)相手を選ぶことが最も重要となります。

調剤薬局を売却・譲渡する際の注意点

事業継承はオーナー経営者にとっても従業員にとっても大きな転換期となります。経営者、従業員一体となって過去から今までに培った患者様との信頼を次世代につなぐ集大成ともいえます。したがってオーナー経営者自身はもちろんのこと、従業員、患者様、処方元ドクター等のことも考えて、皆が極力満足できるものにしなければなりません。

薬局の譲渡を検討する理由には、以下のような様々な理由があります。

  • ・経営者が高齢となったが後継ぎがいない
  • ・高齢のためハッピーリタイアしたい
  • ・薬剤師が急に退職してしまい代わりの人材が見つからない
  • ・薬剤師の人繰りの為に1店舗だけ譲渡したい
  • ・薬局が遠隔地にある為管理が難しい
  • ・経営そのものに疲れた
  • ・店舗売却による借入金圧縮(財務体質の改善)
  • ・不採算店の整理

医薬分業の黎明期に調剤薬局を創業した経営者の多くは60代~70代だと思います。健康寿命は男性72歳、女性75歳と言われていますから、70歳を目処に事業を自分がリタイアした後にどうするのか、考えて具体的に動いておく必要があります。

M&Aで譲渡する際には、やはり譲渡条件(金額)が重要なポイントになってきます。譲渡条件が決まる要素としては以下のものが挙げられます。
①損益の状況、②処方元ドクターの年齢や後継者の有無、③集中率、④業績見通し、⑤タイミング、⑥交渉の進め方、⑦仲介業者選び(能力、手数料)

条件を決定する際に最も大切なのは損益の状況と業績見通しになりますが、タイミング、交渉の進め方、仲介業者選び(能力、手数料)といった点も譲渡価格に大きな影響を与える大変重要な要素です。繰り返しになりますが、成功するM&Aにつながるかどうかは、どこの誰(事業者)に頼むかで決まると言っても過言ではありません。

不本意な結末を避けるためにも、早めに準備をしておくに越したことはありません。思い立った時に複数の事業者に相談して、信頼できる事業者、担当者を見つけておくのも良いでしょう。また、M&Aでの薬局譲渡を経験した知り合いの経営者に相談する、紹介を受けるといったことも仲介業者選択の大きな助けになると思います。

調剤薬局を売却・譲渡の成功事例

〇S社の事例

承継元 S薬局概要 継承先 K社の概要
業種 調剤薬局 業種 調剤薬局
年商 6,000万円 年商 6,000万円
所在地 神奈川県 所在地 神奈川県

S社は調剤薬局を2店舗経営している会社で60代後半になるご主人と奥様がそれぞれ管理薬剤師となり、長年にわたって店舗経営をしてこられました。社長であるご主人はまだお元気なのですが、奥様が体力的にもつらくなりS薬局の運営を今後も継続していく事が困難となり、当社に2店舗中1店舗の譲渡をご相談いただきました
S薬局の立地は駅前立地でOTCの販売にも力をいれている面対応の薬局でした。数年前近隣にドラッグストアが調剤併設店舗を出店。その影響で一時期業績が悪化しましたが、直近では売上、処方箋枚数共に増加に転じ、何とか黒字を維持していました。小規模薬局でありチェーン展開する薬局の買収対象とはならない薬局だったことから、個人の独立開業希望者ないしは既に独立開業を果たし2店舗目、3店舗目の展開を考えている候補者を中心に打診。
そんな中でS薬局から電車で30分程度のところで薬局を経営しているK社が2店舗目として前向きに考えたいという話になり、お引き合わせをしたところK社長の誠実で温厚な人柄もあり、S社長夫妻も是非K社長にお願いしたいという事になりました。管理薬剤師の確保に多少時間がかかりましたが、K社長の知人の薬剤師を無事に確保し、この度譲渡が完了いたしました。

〇M薬局の事例

承継元 M薬局概要 継承先 T社の概要
業種 調剤薬局 業種 調剤薬局チェーン
年商 100百万円 年商 8,000百万円
所在地 東京都 所在地 東京都

M薬局は薬剤師のT社長がご夫妻で運営している個人薬局です。
マンツーマンの処方元クリニック(内科)の処方箋を応需していたほか、介護施設との取引もあり、経営は順調でしたがご年齢が65歳になったのをきっかけに引退をお考えになり、M&Aによる譲渡を決断されました。
当初T社長はご自身の人脈の中で相手を探そうと、知人の薬剤師の勤務しているチェーン薬局などに興味があるか相談しましたが良い返事がなくお困りだったそうです。そんな中こういう話はやはりその道のプロに任せたほうが良いのではないかと思い直し弊社にご依頼を頂きました。
処方元医療機関の医師もT社長と同年代ではありましたが、ご子息も医師であり将来はクリニックを継承する可能性が高いと思われること、足元の行政も堅調であったためT社長のご希望の条件での譲渡は可能と考え、自信を持ってお引き受けしました。薬局所在地と規模感から当社で候補先をリストアップし、打診したところすぐに有力な候補先としてT社が手を上げました。
質疑応答、トップ面談と若干の条件調整を経て譲渡契約を締結、無事成約となりました。

調剤薬局M&Aのベストなタイミング

調剤薬局の譲渡理由はこれまで述べてきたように様々です

昨今の診療報酬改定を見てもわかるように、調剤薬局は処方元のクリニックと二人三脚で患者様と向き合い地域包括ケアの一翼を担う事が求められています。経営者の高齢化、薬剤師が確保できない等薬局側の一方的な理由で閉局する事は認められません。

ご子息や身内で後継者がいるケース(親族内承継)や管理薬剤師への承継(従業員承継)を決めているケース以外はどこかのタイミングで薬局をどのように承継していくのか、というテーマにいつか必ず向き合うことになります。

すでに引退年齢を迎えている、診療報酬改定による収益の悪化が見込まれる等で、将来が見通せないのであれば調剤薬局譲渡を検討するタイミングなのかもしれません。

調剤薬局M&Aの最新トレンド2019はこちら

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