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中小企業M&A譲渡価格の決まり方の実際その2

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リーマンショック後は特に営業権(のれん)に対する見方が厳しくなってきています。

(1)上場会社の会計処理方法が変更になり、毎期のれんの価値が低下していないかどうか吟味し、下がっていれば監査法人から、減損処理を強いられる可能性が高く、M&Aの際にはのれんを慎重に見ざるを得なくなっていること
(2)経済情勢を反映して、買い手が慎重になっていることに加え、過去に過大なのれん代金を支払って買収したものの、投資回収がなかなかできず、残念ながらM&Aが失敗に終わってしまったという失敗事例が数多く積み上がってきたこと
などが影響していると思われます。そのようなことから、多額ののれん代が発生するM&Aは買い手が敬遠する傾向にあります。

2000年前後のITバブル時のように、特別な状況、過大な期待値と評価によって、売り上げの数倍、ケースによっては数十倍で会社が取引されていた時代がありました。
当時はそれが相場(?)だったわけですが、振り返ってみれば、そのような途方もない金額でM&Aが成立した後は、投資回収できるわけもなく、ごく一部のケースを除いておおむね投資回収できずに失敗に終わっていると思われます。

ITバブルが終焉し、2000年代前半は、東証マザーズ、大証ヘラクレスなどの新興市場が整備され、新興市場にベンチャー企業が次々と新規上場していたころで、M&Aで連結業績を伸ばし、投資家にアピールすることで株価が上昇したという時代でした。この時代は新興市場に上場後、自社の事業だけではスピーディーな成長は見込めないということから、IPOで調達した資金でもう一つ、二つと事業の柱が欲しいということで、M&Aを行い、事業を拡大していこうという考える会社が数多くありました。

M&Aを行うと期待値で株価が上昇し、上がった株価を利用して株式交換などで、さらなるM&Aを行い、時価総額がどんどん膨れ上がっていくという企業も、ライブドア、グッドウィルグループなどが代表的ですが、何社か存在していました。名前を挙げた2社はM&Aで失敗したというよりは、コンプライアンスの問題に端を発し、マスコミのバッシングに遭って表舞台から消えていってしまったわけですが、上手にM&Aを行っていた会社はしっかりと残り、今でも成長を続けています。逆にM&Aで失敗した会社は、それが直接の原因ではないにせよ、いわゆるジャンク銘柄となっていたり、上場廃止に追い込まれた会社なども多くあります。

中小企業のM&A業界に長年身を置いていて感じるのは、適正な金額、合理的な金額の範囲内でM&A取引がなされなければ、会社自体の運営に支障をきたしたり、買い手企業までが、おかしくなってしまったりすることが多いということです。

M&Aは確かに事業基盤を強化したり、スピーディーな成長を実現したりできるのですが、失敗すれば資金を無駄にすることになり、無理のあるM&Aを行った結果、売り手、買い手双方が立ちいかなくなるということまで起こり得ます。M&Aをうまく活用している企業はほぼ例外なく合理的な金額でしかM&Aを行っていません。自社の投資尺度を明確に持つことが大切で、どんなに魅力的で欲しい事業であっても、合理的に考え得る金額から逸脱してまでM&Aをする必要はないのです。

また、これまでの経験側では、M&Aの際、のれん代が少ないケースほど、その後の運営がうまくいっているように思います。これは売り手の社長が自身の金銭欲、プライドよりも社員の今後や将来を考えて、無理のない金額で売買が成立し、買収後に会社を成長させるための資金や社員のモチベーションを高めるための資金が捻出(ねんしゅつ)しやすくなることに関係していると思われます。

事業承継を目的にしたM&Aは、いかに高い条件で売却するのかということよりも、いかにしてうまく会社(事業)を運営してくれる相手に託し、会社(事業)を次世代に継いでいってもらうのかという点に力点が置かれるべきだと考えます。

のれん代が非常に高く、合理的レンジを大きく超えた金額で取引が成立しているケースはかなり高い確率で、その後の運営は失敗し、残された社員が不幸になっています。

買い手は将来得られる利益を考えて投資するわけで、金額が大きければ大きいほど期待値はそれだけ大きくなりますし、残された会社、社員にはプレッシャーと負荷がかかることになります。その後がうまくいかないM&Aは非常に残念なものです。高く売れればそれで良いということは決してなく、イグジットには成功したのかもしれませんが=M&Aの成功ということでもないのです。

数年後振り返ったときに、会社が成長を遂げ、社員も活躍の場が広がり、一生懸命働けている、そういったM&Aが理想的です。事業を承継するためにM&Aを行なう訳ですから、後々社員からも感謝されるような良いM&Aにしたいものです。

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