中小企業M&A譲渡価格の決まり方の実際その1
M&Aで会社を譲渡する場合、自分の会社はどのくらいの価値があり、いくらで評価してもらえるのだろうか?逆にM&Aの話が持ち込まれた際に、買い手として、どのくらいの金額を提示すればよいのだろうか?最も気になるポイントだと思います。
M&Aを行う場合、売り手はできるだけ高く売りたい(評価してほしい)、買い手はできるだけ安く買いたい(投資額を抑えたい)と考えるのが通常です。
結論から言いますと、中小企業のM&A価格の決まり方は、売り手が「いくらで売りたい」という希望する条件がまずあって、候補先に打診をしていった結果、その会社を買いたいという買い手が現れ、交渉を重ねて最終的に決定した金額が、いわばその会社、事業の譲渡価格ということになります。
時代背景、タイミング、交渉力、持ち込み先の的確さといった要因によって譲渡価格は変化します。最も必要とし、活かしてくれる相手に譲渡するというのが売り手にとって最も良い形です。
企業評価の方法には幾つかの理論がありますが、絶対的な評価方法というものは存在しません。特に企業価値評価実務で支持されているDCF(ディスカウントキャッシュフロー)法などは、精緻な事業計画が前提であり、実行されてはじめて理論に基づく価値(数字)になるため、数字の取り方ひとつで大きく価値がぶれるので、中小企業の企業評価にはあまり適さないと思われます。事業運営は不動産賃貸収入のようなわけにはいかないのです。
中小企業のM&Aでは、企業価値を決めるのによく使われる計算式があり、ある程度の合理的な相場感、目安というものがあります。従って、この計算式と相場感を知っておき、その合理的なレンジの中で価格が決まるようになれば、割高に会社を買ってしまったり、割安に買いたたかれてしまったということも減るのではないかと思っています。
中小企業M&A企業価値を算定する際に最もよく使われる算式が下記のものです。
判りやすくシンプルなことから、中小企業のM&Aの実務で最もよく使われており、条件が安いか高いかという判断が簡単にできるため、覚えておくと良いと思います。

ここでいう実質利益というのは、例えば
▼役員報酬を多額に取っている。
▼節税のために保険に加入し、利益の繰り延べを行っている。
▼節税のための金融商品を購入している。
▼社長の私的経費を会社で多額に支払っている。
などで、中小企業の場合は会社の実際の利益が見えにくくなっていることが多々あります。上記のような点を加味して、その会社の実力として、実際の利益としてはいくらなのかを表したものです。評価倍率については、つい5年ほど前までは、実質利益の3~5倍、すなわち営業権(のれん)は営業利益の3年分とか5年分といわれていました。
リーマンショックを経て、現在では営業権(のれん)は総じて付きづらくなっており、実質利益1年~3年分程度が相場になっています。よほど魅力的な優良企業(安定的に利益を生み出す力があり、事業に将来性もあるという会社)でのれんが5年分付くということもなくはないのですが、普通の中小企業ではまれなケースといえるでしょう。
逆に赤字の会社や、黒字であってもM&Aの市場であまり活発に売買されていない(買い手がいない)業種の場合には、のれんがゼロ、またはマイナス(売買額が純資産を割り込む)ということもあります。また、評価倍率については、自社がM&Aのマーケットで人気がある(買いたい会社が多い)業種に属しているのか、そうでないのかによっても違ってきます。なぜなら名乗りを上げる買い手が多数いる場合と、やっとのことで買い手が見つかる場合では交渉の仕方も違ってくるからです。












